私は綺麗な液体しか口にしていないはずなのに、何故こんなにも私から出る液体は不潔なんだろう。私という容れ物に入っている液体のことなんて考えるだけで寒気がする。「水よりもヒトの身体に近い水」とうたっている液体があるらしいけれどそんなの嫌悪感を抱かざるを得ないし、できるものならば人の体から遠い液体を吸収できなくていい、そのまま私の中を巡ってほしいのだ。紅茶はこの装置を通ると綺麗な液体になって出てくる。蒸留の仕組みを用いることで、電熱器によって熱を与えられている間透明な紅茶を生成し続ける。その時発する紅茶の匂いに部屋は包まれる。こういうものに私はなりたかったから、少しでも近づけたらと出来上がった透明な紅茶を飲むための小さな茶会を開くことにした。
蒸留の装置を作るにあたり初めて銅の鍛金を行った。キャンパスのある茨城県取手市にはビール工場があり、そこで見た銅製の蒸留器が強く印象に残っていたこともあり、銅で好みの形を作ることにした。小さなシンクは冷却用に使用し、大きなシンクは蒸留を終えたどす黒い液体のプールになっており透明な紅茶とはまた違う匂いを発している。小さな茶会のためのティーセットは液体の透明さを楽しめるよう透明の耐熱ガラスのもので揃えた。