about
寝る前に医療用コルセットをつけることが、中学生の時に脊椎側弯症と診断されてからのナイトルーティーンでした。しかし、来年には手術によってこのルーティーンもなくなる予定です。やがて不要となるオーダーメイドのコルセット。それはまるで抜けた髪の毛、取れたかさぶた、切られた爪。確かに自分の一部だったのに、自分ではなくなったモノたちのように思われました。そこで、医療用コルセットによって揺らぐ背骨の存在感と自分との関係について、私の思考を整理するのに最も適した漫画という手法を使って描き、その漫画を原作とする映像を制作しました。
本作は上記の映像作品《ナイトルーティーン》を中心とする映像インスタレーションです。インスタレーションは漫画を原作とする映像に加え、赤い光、海亀と自分の身体を融合した彫刻、使用済みコルセット群によるオブジェ、自分の脊椎のMRI写真と蟹を組み合わせた作品によって構成されています。
映像は、海亀視点で海岸を歩くシーンを追加したり、実際に制作したオブジェを取り込むなど、現実と画面内を何度も行き来しながら制作を進めました。海亀の甲羅の中にはスピーカーが入っており、映像中での私の独白は海亀の口から発されているように聞こえます。