THE 16th GUNMA BIENNALE FOR YOUNG ARTISTS
2025/7/19 – 8/24
群馬県立近代美術館(群馬県高崎市)
展示作品:《新身訓練:人魚の受け入れかた》(2022)
撮影:荒川弘憲
2025年7月19日〜8月24日のいわゆる夏休み期間に展示があります。
群馬県立近代美術館で開催される「群馬青年ビエンナーレ2025」という展覧会です。
展示作品は《新身訓練:人魚の受け入れかた》で、2022年のクマ財団での成果展で発表した作品です。
当時、キュレーター/心理療法士の西原珉さんが「おもしろい…」と何度も言いながら見てくださったのが印象に残っていたのですが、数年後所属学科の准教授に着任されたことで心理療法の観点からおもしろさを見出されていたことが判明しました。博士課程で「語り直し」をキーワードに自作を分析するきっかけになった作品でもあります。今年の夏から秋頃にかけて、西原珉さん主導のプロジェクトにゲストアーティストとして参加することになったのもあり、再展示には感慨深いものがあります。
再展示にあたり、縦読み漫画をpixivにもアップロードしてみました。
この縦読み漫画のほか、新聞形式の読み物「新身訓練」、2019年に制作した《人魚 – Artificialfish》、その人魚が目を回す映像《人魚の受け入れかた》という複数媒体によるアウトプットをぐるぐると眺めるうちに、だんだん新しい身体を受け入れるための拒絶反応であり準備体操でもある「めまい」を追体験できるようになっています。口の中に口内炎がある人は時々患部を舌で撫でて、些細な痛みを感じながら鑑賞するのもおすすめです。
クマ財団で展示したとき、ある人から複数のアウトプットが並んでいることに混乱したという感想を貰いました。それは視野が広いかつ情報を分節化しない人の感想だなと思いました。肩幅にまで視野を狭めて、一つ一つを個別のものとして順番に見ていき、一通り把握して初めて全体を眺める。空間として経験するのではなく、情報の羅列として順番に処理するイメージが私のものの見方に近いのだと思います。帰納的とも言えるでしょう。
町田にある版画美術館に行った時、みんな壁に近づいて順番に作品を見ていることに感動しました。ああ、銅版画って画面が小さいから近づいてよく見る必要があるんだ! 壁に近づいてじっくり銅版画を鑑賞するとき、展示会場の空間への意識はすっぽりと抜け落ちます。身近な例だと漫画を読んでいる時もよく似た状態だと思います。目の前の小さな画面に意識が向いて、自分がどういう環境にどういう姿で存在しているかという現実から解き放たれるようなイメージです。そして、我に返るように、または息継ぎするように自分の身体に意識が戻ってきます。江國香織『きらきらひかる』の主人公がパートナーに抱きしめられている時にふと「今の自分の身体は変な形になっている」と気づくシーンが好例です。
今回、新聞形式の読み物「新身訓練」は壁面に貼り出し、手に取って読めないようにしました。小さい文字を追うために、壁に近づいてもらおうというわけです。しかし、一緒に並ぶ縦読み漫画はアニメーションになって動き続けるし、人魚が目を回す映像は見ているだけで酔いそうになります。壁に近づいて空間のことを忘れ内的世界に片足を突っ込んでは、身体に意識が戻り急に自分が今いる場所を思い出す。平泳ぎみたいに、意識が情報空間と身体を往復する時間を楽しんでもらえれば幸いです。
以下詳細です。
「群馬青年ビエンナーレ」は、新進アーティストを対象とした全国公募の展覧会です。16回目の開催となる今回は244組から342点の応募をいただきました。書類選考により44組44点が入選となり、6月に行われる入賞審査で、大賞、ガトーフェスタ ハラダ賞、優秀賞、奨励賞が決定します。
入賞作品を含む全入選作品を展示する本展では、絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションなどさまざまなジャンルの作品が一堂に会します。世界へと羽ばたいていく可能性を秘めたアーティストたちの多彩な表現からは、清新なまなざしや情熱が感じられることでしょう。これからのアートシーンを担う彼らによる、時代の感覚をとらえた作品を通して、美術の「いま」をご体感ください。
なお、展覧会初日の7月19日(土)には、表彰式を行います。
群馬県立近代美術館
群馬県高崎市綿貫町992-1 群馬の森公園内
Instagram:https://www.instagram.com/gunmakinbi
X:https://twitter.com/gunmakinbi
群馬青年ビエンナーレ2025
会期 2025年7月19日(土)から8月24日(日)
開館時間 午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日(7月21日、8月11日は開館)、7月22日(火)
会場 展示室1
観覧料 一般500円、大高生250円
20名以上の団体割引料金 一般400円、大高生200円
注:中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方とその介護者1名は無料















