Training for my new body 02 – How to accept artificial fish
![](https://okunochiho.com/wp-content/uploads/2022/12/SZ6_8245-8-1024x681.png)
3Dモデリングで再現された《人魚-Artificial Fish》が目を回してフラフラ画面内を動き回る様子の上に、黒で渦巻きが描かれた駒が回る様子を重ね合わせた映像。使用した駒は、回転する様子をじっと見た後に静止画を見ると動いているように見える「運動残効」という錯覚に用いられるもので、じっと見ていると平衡感覚が失われていく感覚を引き起こします。
HP上で発表した全5話の縦読み漫画を一本につなぎ(全長600pixel×94,388pixel)、縦スクロールしていく映像として再編したもの。
2019年に制作した《人魚-Artificial Fish》と脊椎側弯の手術を終えた自分自身を重ね合わせ、作り変えられた身体を受け入れていく過程を見つめるための作品群を、ひとつの作品《新身訓練 02 – 人魚の受け入れかた》として展示しました。
この作品の背景には、麻酔が解け、新しい身体で目覚めた瞬間から3日くらい続いためまいのなかでの経験があります。そのめまいがマシになるまでの永遠にも感じられる時間に、私はヒラメとカレイが融合されて上下左右を見失った《人魚-Artificial Fish》を追体験したのでした。
《新身訓練:人魚の受け入れかた》は4つの要素に分けることができます。①3Dモデリングで作られた人魚が錯覚を起こす渦巻の独楽に重ね合わされて人魚のめまいの様子を追体験する映像、②ヒラメとカレイの半身同士をつなぎ合わせて樹脂封入した《人魚-Artificial Fish》、③めまいの経験をモチーフにした縦読み漫画(モニターで縦に流れていく映像として表示させた)、④入院前中後に書いた日記を加筆修正して制作した新聞形式の読み物『新身訓練』といったミクストメディアでつくられた作品が空間に並びます。
この作品は、思索を漫画や映像、新聞など多種にわたる「情報の編集」を経たアウトプットを再構成していることが特徴です。鑑賞者を理解や学びへとつなげるまでの一見過剰なアクセシビリティの試みは、アートだからこその過剰性とともに表現の可能性を探求していると考えています。これらの作品群を気散じ的に眺めることによって、それぞれの連関が浮かび上がり、制作者である私自身までもが作り変えられた身体を受け入れる過程をありありと追体験することができます。ループし続ける映像たちによって、それらの追体験を何度でも再解釈できることを目指しました。